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研究書(文学系) 詳細

9784838607785

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新装版 紫式部日記論

武蔵野書院創業百周年記念出版
書名かな しんそうばんむらさきしきぶにっきろん
著者(編者)名 久保朝孝 著
著者(編者)名かな くぼともたか
ISBNコード 978-4-8386-0778-5
本体価格 7,000円
税込価格 7,700円
判型 A5判並製カバー装
頁数 344頁
刊行日 2023年3月1日
在庫 有り
『紫式部日記』という困難に挑む
 現存『紫式部日記』は、父藤原為時を第一の読み手とし、娘紫式部によって記された「家の記」としての「仮名日記」に基づき、内省的記述を付加して作成された「別記」群の不完全な集成である(第一章)。
 本書は、この想定に至る著者積年の論考を一書にまとめたものであり、混迷を極める本作品成立過程(形態)論に一筋の光明をもたらす雄編としてここに提示する。

目次

    はしがき
    凡例
 〈本編〉
第一部 『紫式部日記』の成立
 第一章 『紫式部日記』の成立
     ─読み手の想定を手がかりに─
   一 研究史の整理
   二 池田節子説に即して
   三 「別記」としての『紫式部日記』
   四 女子による「家の記」
   五 藤原為時家における親子の紐帯
   六 『紫式部日記』の成立過程
   七 「家の記」としての意義
 第二章 『紫式部日記』所謂消息文とそれに続く記事との執筆先後の問題
         ─所収和歌を起点として─

   一 所謂消息文の後に位置する和歌の異質性
   二 寛弘七年記事の検討
   三 寛弘七年記事変貌の因
   四 「十一日の暁……」段とそれに続く贈答歌所収二段の位置
   五 結び
 第三章 古本系『紫式部集』巻末付載「日記歌」考
   一 「日記歌」は首欠説の根拠となり得るか
   二 南波浩説存疑
   三 家集歌と「日記歌」、それぞれの詞書独自本文の比較
   四 「日記歌」冒頭三首の検討
   五 「日記歌」冒頭三首と同一家集歌の検討
   六 複数の「日記的小家集」の想定
   七 「日記歌」の名称
 第四章 『紫式部日記』所謂消息文試考
     ─その主題と執筆意図─
   一 所謂消息文再検討の意義
   二 同僚女房批判の実相―小少将の君の焦点化―
   三 同僚女房批判の展開―未熟な上﨟への憤り―
   四 同僚女房批判の意味
   五 宮廷社会における自己の定位
   六 消息文の主題と執筆意図
 第五章 『紫式部日記』の日記的部分における「侍り」の機能
   一 「侍り」の機能再検討の意義
   二 先行研究の到達と問題点
   三 「侍り」使用の種々相とその機能①
   四 「侍り」使用の種々相とその機能②
   五 私的感懐の抑制
 第六章 『紫式部日記』首欠説批判
   一 首部欠落に関する対立
   二 首欠説論拠〈一〉批判
   三 首欠説論拠〈二〉批判
   四 首欠説論拠〈三〉批判
   五 首欠説論拠〈四〉批判
   六 「日記的小家集」想定の限界
   七 首欠説の否定
 第七章 『紫式部日記』敦成・敦良両親王御五十日祝宴記事の比較
   序
   一 観察姿勢の相違
   二 宮廷女房としての行動者
   三 両親王御五十日祝宴記事起筆態度の相違
   四 両親王御五十日祝宴記事展開の相違
   五 敦良親王御五十日祝宴記事執筆の意義

第二部 『紫式部日記』の諸相
 第八章 『紫式部日記』の和歌
     ―敦成親王誕生前後の十首―
   はじめに
   一 敦成親王誕生前の四首
   二 敦成親王誕生後の六首
   おわりに
 第九章 『紫式部日記』の風景―庭園の遠近法―
   はじめに
   一 冒頭の風景―庭園の遠近法―
   二 女郎花の贈答―逆転する視線―
   三 五日の御産養―反転する視線―
   四 月夜の舟遊び―ウチとソトとの融合―
   五 水鳥の憂愁―視線から思念への転移―
   六 一条天皇行幸―聴覚から視覚への転換―
   七 里居の追懐―回想を誘う庭―
   おわりに
 第十章 『紫式部日記』の土御門殿―宅のパトス――
   一 藤原道長と土御門殿と『紫式部日記』
   二 土御門殿の概要
   三 『紫式部日記』にみる土御門殿の行事
   四 呼び寄せる土御門殿
   五 出産する土御門殿
   六 上昇する土御門殿
   七 付けたり
 第十一章 『紫式部日記』断片記事三編の行方
       ―白詩「海漫漫」享受を起点として―
   一 「十一日の暁」記事の始まり
   二 漢才は発露されたのか
   三 「海漫漫」の諷刺性
   四 「十一日の暁」記事の不調和
   五 続く二編の断片記事

第三部 紫式部の影像
 第十二章 紫式部の虚構の方法
      ―『源氏物語』と『紫式部日記』に見る〈読み手〉の導入―
   一 静かな《読者》
   二 発言する〈読み手〉―仮構される《読者》Ⅰ―
   三 晦ます〈読み手〉―仮構される《読者》Ⅱ―
 第十三章 日記文芸史の内なる〈紫式部〉
      ―『紫式部日記』以前―

   一 前提
   二 『土佐日記』と〈紫式部〉
   三 『蜻蛉日記』上巻と〈紫式部〉
   四 『蜻蛉日記』中巻と〈紫式部〉
   五 『蜻蛉日記』下巻と〈紫式部〉
   六 『和泉式部日記』と〈紫式部〉

 〈付編〉
 第一章 『伊勢物語』初段に関する三つの問題
   一 古典本文の問題
   二 段落分けあるいは物語構造の把握
   三 引歌の分かりにくさの意味
 第二章 『古今和歌集』六一六番歌と『伊勢物語』第二段歌の再検討
      ―同一異相の和歌をめぐって―
   一 『古今和歌集』六一六番歌の位相
   二 『古今和歌集』六一六番歌の構造―新解釈
   三 『伊勢物語』第二段歌の再検討―新解釈
   四 『古今和歌集』六一六番歌と『伊勢物語』第二段歌の関係
      ―片桐洋一修正説の批判的検討―
   五 同一異相歌を視野に入れた文学史の構想
 第三章 父に早逝されて零落した姫君たち
     ―空蝉・夕顔・末摘花―
   一 空蝉の思惟―身の程意識の内実と源氏拒否―
   二 夕顔の不安―もの怖じと隠された誇り―
   三 末摘花の意志
     ―〈静止する行動〉を支えるもの―

     原題・初出一覧
     あとがき
     索引


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